「NHKポップジャム」

★明日への扉〜路上の天使〜川嶋あい
 
  
東京渋谷、少女が1人路上で歌っている。
  彼女は現役の女子高生。
  自分で詩を書き、曲を作り、路上で歌うようになって1年が過ぎた。
  彼女の名前は川嶋あい、17歳。この春、彼女は大きな夢を実現した。
  渋谷公会堂でのコンサート、客席の数はおよそ2,000。
  半年をかけて路上でチケットを売った。
  17歳の少女の、ひと夏の挑戦だった。
  川嶋あい、この日、彼女にはどうしても伝えたいことがあった。

  (あい) 実は、このステージでみなさんに報告しなければいけないことがあります。
       川嶋あい、私は、I WiSHのボーカル ai です。


  I WiSH、彼女が作り、今年2月に発売した「明日への扉」、80万枚というビッグヒットを記録した。
  しかし、これまで彼女が、I WiSHのボーカルaiであることは、公表されていなかった。
  I WiSHのビッグヒット、でも彼女の毎日は変わらなかった。
  渋谷で路上ライブを続けた。
  何故なら、彼女には自分で決めた3つの目標があったからだ。

  
川嶋あい、3つの目標
  1、路上でのライブを1,000回やること。
  2、CDを自分の手で5,000枚売ること。
  3、渋谷公会堂でコンサートを開くこと。

  どれも、17歳の少女にとっては、無謀なものに思えた。
  コンサートまで、あと1週間に迫っていた。チケットは500枚しか売れていない。
  なぜ、彼女はたった一人、こんな挑戦を始めたのか・・・

  川嶋あいは17年前、福岡に生まれた。
  音楽との出会いは、3歳の時、音楽の道に導いたのは母親だった。
  お母さんのためにも歌手になりたい!そんな気持ちが心に芽生えていた。
  中学卒業と同時に、たった一人で上京、でも、現実は厳しかった。
  デビューもできないまま、1年がすぎた。ただ、歌は捨てられなかった。
  誰かに聞いてほしい。そんな思いで路上に出た。

  (あい) 路上しかなかったんですよ。友達はみんな夢に向かって動き出していて、私は何も動き出していなかったので、
       とにかく、何かやりたいと思っていて、必死の思いで出たんです。
       毎日家に帰ると、ほんとみじめなんですよ。
       外に出たほうが気分的にも楽になれるので、唯一落ちつける場所といった感じですね。


  貯金をはたいて機材を買った。無我夢中で歌も作った。上京してから彼女が作った曲は100曲を超えた。
  路上、それは誰かに歌を聞いてほしい、そう願う彼女にとって、たった一つの場所だった。

  (あい) 今のまま、ちんたらやっていても、めどがつかないなと思って、まず1,000回、路上ライブを!と決めて、
       1,000回やればきっと誰か認めてくれるのではないかと思いました。
       それで、1,000回やって駄目だったら諦めようと思って決めました。


  歌いつづけるうちに、彼女の噂が少しづつ広がっていった。
  彼女の歌声に耳を傾ける人の輪も大きくなっていった。
  たった一人、毎日泣いていた東京の暮らし、歌は、彼女に希望を与えた。私はもう1人じゃない。

<あいの路上での活動を支えるのは、学生達105名、あいの活動に共感し、集まったかけがえのない仲間達である>

  渋谷公会堂、観客数1,923人。ほぼ満員の観客で埋まった。
  コンサートが行われたこの日は、共に歌手を夢見た母親の思い出の日である。

<第1曲:ガラスの中の私>

  そして、コンサートの最後は、いつもの路上と同じように制服にキーボードで、「明日への扉」の原曲となる「旅立ちの日に」を歌った。
  翌日のテレビのワイドショーは伝えた。
  「I WiSHのaiは、川嶋あいだった」

  (あい) 回りは変わってないけど、あの報道を見ると、私は遠くに行ってしまったのかなと・・・・・・
       川嶋あいは、そんな遠くには行きたくないので、I WiSHはライバルだなといった感じですね。
       川嶋あいの最大のライバルですね。超えたいと思っています。


  2003年8月30日、川嶋あいは路上に帰ってきた。
  やり残した路上ライブの目標を果たすために・・・

  
路上を始めて 548日
  路上で売ったCD 9,046枚
  路上で行ったライブ 731回 目標まで あと 269回

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